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フレンズ
第1章 フレンズ
実家の母は私が突然戻ってきたことに驚いていたけど、
理由は聞かずに迎え入れてくれた。

私は家事を手伝いながら母と過ごした。

ケータイの電源は切っていたので、
誰とも連絡を取らずに過ごした。


克巳の肌の感触を何度も思い出して、からだが疼く。

同時に、文香の寂しげな顔も
事あるごとにひらりと記憶によみがえって胸を刺す。

申し訳なさで喉の奥がずしんと重たい。
食事は喉を通らなかった。

二人にどんな顔して会えばいいんだろう。
分からなかった。

もう消えてしまいたい。



大学を休んで二週間。

日曜日、
文香が実家まで私を訪ねてやってきた。

部屋に招き入れ、お茶を出す。

文香も私も、しばらくの間互いに何も言わなかった。

話すべき言葉が見当たらない。
頭が、真っ白になる。

やっとのことで声を絞り出した。

「文香…ごめん」

「なんで謝るの?」

「あたし…富樫と寝た」

「知ってるわ」

文香の声が震えている。
そっぽを向いた文香の、眼のふちが赤かった。

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