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S-Horror
第3章 未恋


ここ…どこ?

僕は昨夜と同じ交差点に浮いていた。

あぁ…やっぱりそうか…。

僕らしき僕が倒れていたすぐ傍に白い花が手向けられていた。

奈央はどうしただろう。
今日は顔を腫らしてるんじゃないのかな…。

奈央に会いたい…。
願うと浮いた僕は宙を移動することができた。

馴染んできたのかな…これで会いに行ける…。

少し進むと歩道脇の植樹の根元に白い小さな箱を見つけた。
僕は潜るように近づいていく。

あぁ、やっぱりそうだ。
奈央に渡したのに、昨日転んだ拍子に鞄から飛び出してしまったのか。

届けてあげなきゃ…あんなに喜んでくれたのだから…。

僕は箱の前にしゃがみ込んだ。

なんで…奈央にもう一度渡さなきゃ…
だってこれは奈央の指輪なのに…
これがなきゃ、また泣いちゃうかもしれないのに…。

さっきから何?

ひとの身体を勝手に、ちょっと気持ち悪いんだけど…。
人の行き交う交差点、しゃがみ込む僕を知らない人達がぶつかり、通り抜けていく。

誰も何も感じない。
誰も僕に気づかない。
僕の指にも何も感じない。
だから箱を掴めない…。

あぁ…また夜が白めいていく…。



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