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S-Horror
第4章 輪廻
切り裂きジャックという名はある程度の大人なら誰しも耳にしたことはあるだろう。
娼婦が生んだ愛を知らない男と言えば聞こえはいいが、所詮はただのサイコパスだ。
2023年9月某日。
残暑の厳しさから夏日が続くある日、ひとりの女性の刺殺体が発見される。
それは始まりに過ぎなかった。
この年の暮れまでに三人の刺殺体がある街で発見された。
実に月にひとりのペースでだ。
このセンセーショナルな事件は、日本の切り裂きジャックと揶揄され、連日ニュース、ワイドショー、SNSを席捲していった。
本物の切り裂きジャックの時とは時代が違う。
日本の警察だって無能ではない。
というより、この模倣犯がお粗末だった。
あまりにも痕跡を残しすぎていた。
それはそうだろう、三人が三人とも首の頸動脈をかっ斬られての同じ失血死。
そこに至るまで犯人の男はその女性を犯していた。
息が停止する瞬間、この男は女性の中で果てていたのだ。
じゃあ、なぜ容疑者特定に3ヶ月も要したのか?
DNAは前科者リストにヒットしなかったことと、陰が薄かった。
今の社会というより、より狭いコミュニティの街の中でも極めて陰が薄かったからだ。
娼婦の子でもなければ、愛を知らない子でもない。
ただの引きこもりで学生という時間を終えてなお、自ら社会に背を向けていただけの男…。
メディアや世論が待ち望んだ伝説には程遠い男。
では、顛末の話をしよう。
2023年のクリスマスイブ、この男はふらりと家を出た。
性欲が溜まった…それだけの理由でだ。
依れたセーターに薄汚れたデニム、ダッフルコートを着こんで背中を丸めて街に溶けていく。
街はクリスマスネオンに彩られ賑やかだった。
ひとりの女が恋人と待ち合わせをしていた。
不運にも仕事でミスをしてしまい、そのリカバリーに定時で終えることができなかった。
小さな街だ。
繁華街の通りを一本ずれるだけで別世界のように暗く、湿ってしまう。
女は早く恋人に会いたいと思ってしまった。
だから近道をした。
この路地を抜けてしまえば、明るく賑やかな大通り。
女は闇に引きずり込まれてしまった。
咄嗟に声を出そうとしても、大きな掌に口を塞がれていた。
背後から力強く抱きしめられていた。
そして、喉元には鋭利な切っ先が突きつけられている。
「騒ぐな…大人しくしてろ…」
掠れたような低く暗い声が囁かれた。
娼婦が生んだ愛を知らない男と言えば聞こえはいいが、所詮はただのサイコパスだ。
2023年9月某日。
残暑の厳しさから夏日が続くある日、ひとりの女性の刺殺体が発見される。
それは始まりに過ぎなかった。
この年の暮れまでに三人の刺殺体がある街で発見された。
実に月にひとりのペースでだ。
このセンセーショナルな事件は、日本の切り裂きジャックと揶揄され、連日ニュース、ワイドショー、SNSを席捲していった。
本物の切り裂きジャックの時とは時代が違う。
日本の警察だって無能ではない。
というより、この模倣犯がお粗末だった。
あまりにも痕跡を残しすぎていた。
それはそうだろう、三人が三人とも首の頸動脈をかっ斬られての同じ失血死。
そこに至るまで犯人の男はその女性を犯していた。
息が停止する瞬間、この男は女性の中で果てていたのだ。
じゃあ、なぜ容疑者特定に3ヶ月も要したのか?
DNAは前科者リストにヒットしなかったことと、陰が薄かった。
今の社会というより、より狭いコミュニティの街の中でも極めて陰が薄かったからだ。
娼婦の子でもなければ、愛を知らない子でもない。
ただの引きこもりで学生という時間を終えてなお、自ら社会に背を向けていただけの男…。
メディアや世論が待ち望んだ伝説には程遠い男。
では、顛末の話をしよう。
2023年のクリスマスイブ、この男はふらりと家を出た。
性欲が溜まった…それだけの理由でだ。
依れたセーターに薄汚れたデニム、ダッフルコートを着こんで背中を丸めて街に溶けていく。
街はクリスマスネオンに彩られ賑やかだった。
ひとりの女が恋人と待ち合わせをしていた。
不運にも仕事でミスをしてしまい、そのリカバリーに定時で終えることができなかった。
小さな街だ。
繁華街の通りを一本ずれるだけで別世界のように暗く、湿ってしまう。
女は早く恋人に会いたいと思ってしまった。
だから近道をした。
この路地を抜けてしまえば、明るく賑やかな大通り。
女は闇に引きずり込まれてしまった。
咄嗟に声を出そうとしても、大きな掌に口を塞がれていた。
背後から力強く抱きしめられていた。
そして、喉元には鋭利な切っ先が突きつけられている。
「騒ぐな…大人しくしてろ…」
掠れたような低く暗い声が囁かれた。