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第10章 雨女

　一瞬、ポカンとなった彼の表情が、眉間に皺が寄り、怒った顔になった。が、すぐに元に戻った。

「おまえ、日本語が理解できるんだな」
「は、はい？」
「いや。見直したよ。頭の弱い貧乳の女だとばかり思っていたんでな」
「えっと……」

　褒めてくれているらしいのはスミカにもわかった。けれどなんだか面白くない。

　それに。

「……貧乳で悪かったですね」

　気にしていることをズバッと言われて憮然となった。

「なんだ、怒ったのか」
「……だって」
「貧乳でも俺は構わんぞ」
「は、えっ？」
「ここに住んでもいい。その代わりに夜は俺の相手をしろ」
「えっ？！　ええと」
「おまえ、料理はできるか？」
「あんまり……」
「覚えろ。俺のために食事を作ってくれ」
「ええと、征也さん」

　話の急な展開に追いつけなくなったスミカが彼を止めようとした。

「それからな」
「まだあるの？！」
「なんだ。俺に抱かれるのは嫌か？」
「は……う……それは……ええと」
「おまえも、まんざらでもなかったと思ったんだがな」