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ex-girlfriend
第5章 消えた彼女
「美穂ちゃんがいなくなってすぐにマンションに行ったら、
引っ越ししたって言われてビックリしたよ。
あ…お母さんのことも聴いた。
大変だったんだね」と言うと、
彼女はキュッと唇を噛み締めた後、
少しだけ微笑んだ。


「あの時はね。
母が亡くなって、
子供も亡くしてたから、
もう、家族は居ないっていう想いだけが募って、
哀しくて、実家に居るのも辛くて…。
それで、引き払うことを決めて売却しちゃったの。
荷物は殆ど処分しちゃって、
スーツケース一つ分だけで、
取り敢えずホテル暮らししてたの。
そしたら、携帯が壊れちゃって。
ちゃんとデータも保存してなかったのよね。
機種変更したら、上手く引き継げないと思って、
騙し騙し使ってたら、
真っ暗になっちゃって、
電話帳すら、取り出せなくて、
小林くんの電話も判らなくなっちゃったの」と、
丁寧に説明してくれる。


その後、仕事で台南に来て、
ホテル暮らしを続けていると笑う。


「台湾ではこっちの電話になったし。
SNSは、自分のを見つけて、
あれこれ試してみたけど、
なかなかログインする為のパスワードが思い出せなくてはロックされて…。
この前、ようやく、何回目か判らないくらい試して、ログイン出来たら、
小林くんのメッセージがたくさんあって、
のんびり読み始めようと思ったら電話が着て、
本当に嬉しかった」と言う彼女に、
僕はポケットから真紅の箱を取り出して、
跪いて箱を開けてみせると、
彼女はキョトンとした顔をした。
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