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嘘つきは恋の始まり
第3章 つ
「チコちゃん」

こっちを1度も振り向かずにエントランスから出て行く桐生さんの背中を
見つめることしかできなくて
引き止めることもできなくて。
私はただただ、これ以上涙が流れないように我慢した。

そんな私を誰にも見せないように
野口さんは私の腰を抱いたまま
エントランスを出て
何も言わない私をタクシーに押し込んで
自分も乗ってきた。

「け・・経営管理が・・・こんなに早く帰っていいんですか?」

「泣いてるチコちゃんをほっとけと?」
「ほっといてください」
「無理」

タクシーは野口さんのマンションについたと思ったら
引きづられるように私は野口さんの家のリビングに座った。

「え・・・エッチしませんからね!」
「・・・・そこまで鬼畜じゃないんですよ」

「チコちゃん。今ので分かったでしょ。公の場所で名前を呼べるのか呼べないのか」
「そんな言い方狡い!」
「狡くて結構!俺はチコちゃんを振り向かせたいの!」

「・・・・・・」
「桐生部長だったとは・・・・ね」




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