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雨宮さんちのバレンタインとホワイトデー
第10章 3月11日の話
何か不穏なんだよなぁ
子供がさっきから中から
泣きながら出て来るんだけど?
一抹の不安をまたののかは感じながらも
ゲートの所で消毒をして
一つ目のゲートをくぐると
木製の手作り感満載の棚に
子供が砂遊びで使う様な
赤や青や黄色のバケツが置いてあって
エサ 100円と書かれていた
「エサ、あるよ?透真。
透真もエサやりするよね」
返事を待たずに
ののかが料金箱に200円を投入して
適当にバケツを取ると
その一つを透真に差し出して来た
中に入って気が付いたっ
子供が泣きながら出て来る理由
ヤギだ ヤギの餌くれアピールが凄い
『カピバラさんのおやつありますよ~』
他の動物のエサとは別に
カピバラだけエリアが区別してあって
緑の長い葉っぱがおやつと言う
名目でお姉さんが販売していて
「やだぁ、透真ッ、
ヤギっ、ヤギ来すぎ!
ちょ、ヤダヤダ、ヤギ嫌いになりそうっ。
って、透真はどうして、
ヤギに絡まれてないのっ、どうして
のんびりしてうさぎにエサやってるのっ」
ののかが数匹のヤギに絡まれているのを
透真が離れた所でのんびりと
うさぎに野菜くずをやりながら見ていて
「動物も、わかるんじゃない?
エサ、誰からなら奪えるかとかさ…。
良かったじゃん、ののか
ヤギさんにモテモテでさ」
ハハハハハッと透真が大声で笑って
「もうっ!透真の馬鹿っ、意地悪っ。
助けてって言ってるの、ヤギ苦手なのっ
目が怖いのっ、マイナスドライバー
専用みたいな目してるじゃんっ」
ののかの言葉に透真が
その場で噴き出して笑いだして
「ぶっ、ハハハハハッ、それは、
ののか、ヤギに失礼じゃない?
それに、目なら羊だって同じ目じゃん?」
「マイナスドライバー専用って事?
でも、ヤギの方が怖いんだよッ」
「あ~やっべ、めっちゃ…笑ったわ。
ののか、ごめんって、睨むなよ。
ごめんって、悪かったって。
笑ったお詫びでもないけどさ。
あそこの隔離されたさ、
安全なエリアでさ、カピバラに
おやつでもやって来たらどう?」
そう言いながら カピバラだけ
隔離されているエリアの前に居た
スタッフの女性からおやつを購入すると
その細長い葉っぱが入った袋を
透真がののかの方へ差し出して来た