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雨宮さんちのバレンタインとホワイトデー
第10章 3月11日の話
ののかが成って居るいちごの中から

「いちごはね、ヘタが反り返ってて
種の周りのね、果肉が盛り上がってるの
それで、完熟のはね…ヘタと
実の間にね、こんな風に亀裂が
入ってるのが美味しいいちごなの」

ホラと大きさは控え目だが
その説明の条件を満たすいちごを
摘むと手の平に乗せて

透真に見せて来る

「赤ければ美味しいんじゃないの?」

「ああ、裏側が白い時もあるから
葉の影とかのは、見た方がいいよ?」

そう言いながら なぜか
自分の口に入れないで
ヘタをののかがもぎ取ると
透真の方にそれを差し出して来て

「はい、透真。あーんして?」

促されて透真が口を開けると
先程のいちごを放り込まれる

ののかがジッと
こちらを見ていて

口の中のいちごを噛んだ時に
フワッと広がる香りと
濃密な甘さが濃く感じて

「んっ、ヤバッ、ヤバ甘いじゃん」

「でもね、そうじゃないいちごに、
偶に凄い、美味しいのがあるの。
この法則じゃないのに、
凄い美味しいやつがあってね。
でも食べないと分からないから
シェアしたいくても出来ないし」

「シェアなら出来るじゃん?」

「え?無理だよ?だって…
全部、口に…入れちゃってるのにッ」

とそこまで透真の言葉に
反論して ある事に気が付いた

え?それって もしかして…

「俺と、ののかとだったらさ
シェア出来るって言ってるじゃん。
口で色々言うよりさ、
試した方が…早いよね?ののか?」

透真がそう言いながら
さっき ののかが話していた
美味しいいちごの条件を満たす
いちごを探して摘み取ると

すぐに口に入れずに
ののかの方を見ながら
そのいちごにチュと口付けると

勿体ぶる様にして
そのいちごに舌を這わせて
そうしてるのを見せつけて来る

「やっ、透真っ。
いちごちゃん、舐めちゃダメッ」

「いいじゃん別に?舐めてもさ。
どうせ、今から…
俺が、これは、食べるんだからさ」

あーんと口を開けて透真が
自分の口の中にいちごを放り込むと

すっごい笑顔でズイっと距離を
詰めて来たから ああ もう
何を考えておいでなのかは

私だって 理解してたけどもッ

やっぱり こうなるのね?
こうなる 流れだったもんね?

「って、と、透真さん?
いちご…をシェアするって、もしかして」


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