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雨宮さんちのバレンタインとホワイトデー
第10章 3月11日の話
そう言いながら 
ののかがブランケットを広げて

そんなに大きくない普通のサイズの
ブランケットだから 
2人で使うには当然 ピッタリと
身体を寄せないと入れない訳で

「ふたりなのに、1枚とかさ
ここのホテルも、分かってる感じの
サービスしてくれるんじゃん」

「いや、でも、ホラ。あそこの
女性ばっかりのグループにも
渡してるから、普通にサービスだと
そう思うんだけどなぁ。
あ。透真、見て、ホラあれじゃない?」

そう言って ののかが
立ててあった看板を指さして
透真に見る様に促して来て

「あ~。足湯のオープン記念の
キャンペーンねぇ…納得したかも」

見えにくかったのか
透真がののかの肩を掴んで
背中に自分の身体を預けながら
身を乗り出して来たから

って看板もう 見たよね?

左肩に添えてある手…

まだそのままなんだけど

「毎日の様にさ、
俺とえっちな事をさしてるのに。
肩抱かれた位で恥ずかしいの?
ののかちゃん、恥ずかしがり屋さん?」

「そっ、そうは言っても…ここは」

「嫌?」

「………」

透真の質問に
ののかからの返事はない

「ダメ…、嫌だった?」

「………う…ぅ、…じゃない」

聞き取れなかったのか
透真が顔を近付けて来て

「ののか?」

「んっ、とう、ま…、顔、近すぎ…ッ」

「いや、俺はさ。
ののかが言った言葉が
聞き取りにくかったから。
顔を近付けたんじゃなくて、
耳を寄せただけだよ?」

「何っ、一休さんみたいな事を
言ってるのよ?上手い事言えとか
そんな事…、言ってない…し?
ああん、もう、だからっ、…別に
嫌じゃ…ないって、言っただけっ」

相変わらず ののかは
恥ずかしがり屋さんと言うか
ツンデレ…と言うやつだよなぁと

その返答を聞きながら
透真はぼんやりと考えて居て

ギュッと左の肩を掴んでいた手に
力を入れると何するの?とでも
言いたげな顔でののかが見て来る

そのまま 左肩を掴んでいた
杏寿郎の手が腕に降りて来て
グイっと身体を杏寿郎の方に
引き寄せられてしまう

「ののか。風が出て来たからさ。
もうっと、身体こっちおいでよ?」

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