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雨宮さんちのバレンタインとホワイトデー
第10章 3月11日の話
近すぎると言いたげに
グイグイとののかが
自分の手で透真の身体を
押し返して来るから

「近いっ、透真。近いからっ」

「近いから、何なのって。
俺的には、まだ遠いんだけど?
意地を張るのもいいけどさぁ。
折角のこの絶景の足湯をさ、
ののかも、ちゃんと楽しんだらどう?」

透真のその言葉にののかは
すっかり口をつぐんでしまって

「ネットでここを見つけた時…に、
一緒にここからののかと、
海を見たいなぁって…。
俺は、そう思ってたんだけどなぁ~。
ののかには、折角のこの海がさ
見えてない気がするんだけど
俺の気の所為でもなくない?」

海… と言われて
視線を海の方へ向ける

一緒にここから 海を見たい…だなんて

透真も意外とロマンチス・・・トって

スルッと二の腕の辺りにあった手が
腰の辺りに降りて来て 腰を掴まれて
更に身体を引き寄せられてしまって
さっき 押し返して開いた距離も
詰められてしまうと ピッタリと
引っ付いて寄り添う形になってしまって

「俺の事…なんて、
一緒に住んでるし、毎日顔見てるし、
引っ付いてるんだから、新鮮味も
無いんじゃないの?ののか」

「海が…、綺麗だね」

「ちょ、ののか?」

「と、透真が海、見ろって言ったんでしょ?
確かに、新鮮味はないかもしれないけどさ。
今日はね…、透真の事…、沢山
素敵だなって感じたし、カッコイイなって
思ったし、それに…。こんなに、幸せで
いいのかな?ってずっと…考えてたんだよ?」

トンとののかが自分の身体を
透真の身体に預けて来て

「幸せ者だなぁ~って。透真さ、
今日の事、沢山考えてくれたんでしょ?
嬉しいって、いっぱい…、
それはね、沢山感じたんだよ?私。
今日一日でね。ありがとう沢山言っても
足りない位だよ?ありがとうね、透真」

透真の身体に自分の身体を預けたままで
ののかがギュッと透真の胸元の
辺りの服と握って来て

「今日は、俺のののかに…喜んで、
貰えた…って言う事でいい?」

「だから、お礼…言ってるじゃん!
ねぇ、透真、あのね?耳貸してくれる?」

こんなゼロ距離で言いたい事なんて
決まってるのに…な

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