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雨宮さんちのバレンタインとホワイトデー
第11章 ホテルにて…*
その透真の言葉通りに
料理が進む頃に酒の方も大分進んでいて

「上…、脱ごう、かな?
ねぇ、透真は暑くない?ちょっと
酔っちゃってる、みたい…」

ののかがそう言うと
持っていた箸をおいて
右手で顔が火照るのか
パタパタと扇ぐと

徐に浴衣の上に羽織っていた
えんじ色の羽織をスルッと脱いで
自分の隣に軽く畳んで置いた

透真と目が合って

「珍しいね…。いつも、あまり
ののか酔わないでしょ?
もっと、日本酒、頼もうか?」

「飲みすぎちゃうよ…?」

「いいじゃん、俺しか居ないんだから。
飲み過ぎて、酔っぱらっちゃってもさ
俺しか見てないよ?」

視線…

私を見てる 透真の視線を

全身に感じて居て
見られてるだけで…妙に意識してしまう

まるで 身体中を
透真の視線に
舐め上げられてるかの様で

はぁっと熱い吐息を思わず漏らしてしまう

「今日のののかは、湯上りだからなのかさ
いつも以上に、色っぽい感じだよ?
その浴衣の所為なのかもだし、
酒の所為なのかも…知れないけど…?」

「気のせい…じゃないかな?
透真、浴衣の事ばっかりじゃん」

「誰が何と言おうと、浴衣は
温泉には付き物だし。醍醐味だよ?」

「って、単に透真が浴衣えっち
したいだけな…んじゃ」

「分からないの?当然でしょ?」

「分かりたくもありません」

「温泉に旅行に来てる男の目的なんて、
それしかないんじゃないの?浴衣だよ?」

と物凄く真剣に言われてしまって
私にはその心理は理解に苦しむが

「でも、まだ完成形じゃないけどね」

「え?浴衣…、着てるじゃん」

「まだ、すっぴんじゃないからダメだってば」

透真の言葉に
ののかが意味が分からないと
言いたげな顔をして来て

「え?そこ?」

「むしろそこ大事なのッ。浴衣に
ラフなまとめ髪に、遅れ毛と、すっぴん
後、髪は少しまだ芯に水分が残ってる
濡髪だと完璧じゃんか」

うずうずと言いたくなってしまって
しょうがない

「透真さぁ…、馬鹿なの?」

「俺が、馬鹿なんじゃない!
男と言う生き物が浴衣に対して、
同じ様な感情を抱いてるだけだってば!」

「やっぱ。馬鹿じゃん」

「馬鹿と言われようと、
温泉に浴衣は譲れないって
なにせ、男のロマンだからな」

腕組みをしながら
透真がうんうんと何かに
納得するかの様にして頷く
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