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雨宮さんちのバレンタインとホワイトデー
第3章 2月10日の話…

ののかがそれに頷いて
食器棚からその背の高いグラスと
冷蔵庫の中に入れていた
瓶を取り出して栓を抜くと
その瓶の中の黒い液体を
背の高いグラスに注いで透真の前に置いた

「はい、透真。
今日はビールの気分だったの?」

「ああ。それも大分前に買って
しばらく飲んでたけど、
冷蔵庫の中にあったまんまだったからさ」

「それよりも、提案って?」

「それなんだけどさ。やはり男としては
女の人にそれを全て出して貰うのはさ、
男の面子がさ、立たない感じがするだって。
ののかのさ気持ち…を、否定する感じでさ
俺も申し訳ないなって思ってるんだけど」

そこまで聞いて 
ののかは違和感を感じた

提案ではないよね?これって

「え?でもホラ、バレンタインだし…
こっちからあげる日じゃない?」

「確かにそうかも知れないけどさ。
女の人に支払いをさせるのは甲斐性のない
男のする事だって、俺は思うんだってば」

そう言ってアイルランド製黒ビールの
グラスを傾けて喉を鳴らして飲むと
その様子をののかが見ていて

「黒ビール美味しい?私は癖がある
感じがして苦手なんだけど…」

「え?そんな事ないよ、旨いって。
コーヒーの様な苦味と香ばしさがあってさ、
これはこれで、味わい深いんだってば」

「ああ、話が途中だったっけ?
そのホテル代の事なんだけどさ。
間を取ってさ、折衷案はどう?」

間を取って 折衷案にしようと
そう透真が提案して来て

何と何の間を…と考えながら
ののかが 冷蔵庫を開くと
冷蔵庫にあったスモークチーズを
適当にレタスを敷いた皿の上に並べて
上からオリーブオイルを
ラインになる様にして掛けると

どうぞと透真前に置いた

「間をって、割り勘にするって事?」

「そうそう、そう言う事。それで
いつもよりもさ、いい所に行かない?
あるじゃん?普通のホテルの
スイートルームみたいになってる所がさ」

そんなラブホテル近くにあったかな?
とののかが近辺のラブホテルを
思い浮かべるが思いつかない

「あるけど…この辺りには
そんな所なくない?」

「いいじゃん、県内移動だったらさ。
コロナが5類になってないけどさ、
県内だったら、セーフでしょ?」

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