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雨宮さんちのバレンタインとホワイトデー
第7章 2月14日の話

毎年冬になると…

JRの特急券とお食事券がセットになって
カニカニエキスプレスと言うのが
カニのシーズンに発売されるのだが

ののかのお母さんが
同じ職場のJRに勤めてる旦那さんが居る
奥さんにオススメの宿を聞いたらしく

純粋にカニを堪能したのなら
ここがオススメだと言って
教えて貰った旅館なのだそうで

豊岡を抜けると…急に雪が残っていて
チラチラと雪が舞う中を
北上して 辿り着いたのは
城崎温泉を抜けて更に先の
竹野だ…カニ目当ての客は
手前の城崎かその竹野の先の香住に行くので

この辺りは…所謂 穴場…なのだ

「やっぱり、雪こっちはあるんだね」

「タイヤは元々ボード行くのに、
冬はスタッドレスだけどさ。
この辺りは雪も多いし、スキー場もある
エリアだから、運転は代わろっか?
今日は、長距離の移動だったし、
俺はゆっくりさせて貰ったしさ」

「もうちょっとだから大丈夫だよ」

ののかが予約してくれていた
カニが自慢の旅館は

『後藤旅館』と言うのらしい

旅館と言うには
こじんまりとしていて
民宿…に近い印象の外観をしている

ガラッと旅館の玄関を開いた途端に
フワッと焼きカニの匂いがして来て

「何っ、めっちゃカニ臭いんだけど。
宿全体から焼きガニの匂いがするし。
部屋とかじゃなくて、全部カニ臭ッ」

『はい、いらっしゃいませ~。
ご予約のお客様ですか?JRさんの?』

「あ、いえ、JRじゃなくて
個人で予約をさせて貰っている
雨宮と申します」


『雨宮様、大人2名様ですね、
お待ちしておりました。お部屋に
ご案内をさせて頂きます』

仲居さんに案内して貰って
食事をする個室に通された

8畳ほどの大きさの和室で
まだ食べる前から既に
部屋に沁みついて居るのか
カニの匂いがする気がする

机の上には
カニスキにもカニしゃぶにも
出来る出汁の入った土鍋と

焼きガニが出来るグリルが置いてあって

綺麗にカットされたカニが
大皿にド―――ンと
豪快に盛り付けられていた

仲居さんから簡単に食べ方の
レクチャーを受けて
後は好きにしなさいと言うスタイルだ

普通の一般的なコースだと
カニスキはカニスキ
焼きガニは焼きガニ
刺身には足が2本とか
そんな風に小分けになってるのが
一般的なカニのコースなのだが


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