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第9章 『茂木純二と真奈美』

職員室の中で、その動画を大音量で
そのお母さんが再生したらしくて。

『母子家庭で生活保護受けてて、
あのオンボロ市営住宅住んでるんでしょ？
前に…園の行事に来てた時に、
お腹大きくて妊娠してたみたいなのに…、
全然赤ちゃん…
連れて来ませんよね？紺野さんのお母さん』

本人たちは声を潜めて
噂話をしてるつもりらしいけど、
周りに余計な音がないから、良く聞こえてる。

『赤ちゃん…実は殺してたりして？
殺して、押し入れに隠したりとか』

『うわぁ、怖いっ、あり得る～ッ。
その内テレビのニュースに出たりして。
あ、それとも…あれじゃないですか？
代わりに赤ちゃん産みますみたいなの…』

『代理母出産は…
日本じゃ法律上出来ないんじゃ…』

『そんなの…分からないじゃないですかッ。
顔に傷がある怖い人たちが、
裏でそう言うのを、
斡旋してたりとかしてぇ～怖ぁ～』

３人で声のボリュームが大きくなってるのに、
気が付いてない様子で保育師達は
すっかりお喋りに夢中になっていて。

トイレの個室の中にこもって…一人で泣いた。
お喋りに夢中になってるから、２０分ぐらいして
やっと１人の先生が私が居ないのに気が付いて。
トイレに声を掛けに来てくれて。

２０時過ぎになって、迎えに来てくれて。

お母さんが…そのまま
ファミレスに連れて行ってくれて。

ファミレスで食べた
エビフライは美味しかったのを憶えてる。