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君と偽りのドライブに
第4章 1‐3:車でお迎え
土曜日の午前十一時、私を拾った軽自動車は、滑るように静かに発進した。
哲弥の運転する車に乗るの、はじめてかもしれない。
この街に住み始めてから、二人で会うのは決まって家か職場から近場の、交通の便がよい場所だった。
彼が車を持っているのは知っていたけれど、普段仕事に行くのには、私も彼も地下鉄を使う。
助手席から、彼の横顔を盗み見る。彼は澄ました顔で前を見つめていたけれど、
「……何」
やば、バレた。
「何でもない」
私は慌てて俯く。
今さら――今さら、哲弥がかっこいいことになんて気づきたくなかった。
二人で食事をした夜から、今日何を着るかずっと考えている私がいた。
彼と会うのはいつも仕事帰りだから、ちょっと違う可愛い格好がしたいと思い、いやいや今さらどうした自分と突っ込み、彼のおばあちゃんからしても、孫の彼女はダサいよりお洒落なほうが嬉しいでしょうと言い訳し、けれどやっぱり、彼にも可愛いと思ってもらいたい自分を否定することができなかった。
さすがにお見舞いなので、派手な色使いは避ける。
明るいベージュのスカートに秋色ブラウス、お化粧もブラウン系でまとめてなんとか落ち着いた。
普段仕事にはつけていかないイヤリングをしてみたり、やりすぎかなと外してみたり、彼からの、もうすぐ着くというメッセージに慌てたり。
私ゃ中学生か。