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君と偽りのドライブに
第4章 1‐3:車でお迎え
二人きりの時間がこれからしばらく続くことを思うと、やっぱり電車を推しておけばよかった、と後悔が頭をもたげる。
だって、哲弥は運転してるから平気だろうけど、私は暇な分余計なことを考えてしまって
――いや、違う、
私が余計なことを考えるのは、暇だからじゃなくて、私が哲弥のことを。
何を今さら、というのはわかっている。
二十年来の付き合いで、私は哲弥の幼馴染みで、愛だ恋だなんて関係じゃない。
けれど、ちょっと期待したっていいじゃない。
哲弥といちばん仲が良くて、期間限定の彼女が必要なときに真っ先に思い浮かぶ、親しい女子は私しかいないんだって、自惚れてもいいじゃない。
彼の運転は、アクセルもブレーキも気づかないぐらい滑らかで、車線変更もソツがない。
私も免許は持っているし、たまに運転はするけれど、こんなに揺れない運転はできない。
「……運転、上手いね」
無言の空間に耐えられなくて私がそう言うと、
「まあ、毎日営業車乗ってるから」
そうだった。
癖毛で黒縁眼鏡の一見もの静かそうな見た目をしていて、こいつはばりばり働く営業マンなんだった。
彼が仕事してるところ見てみたいな、なんて、叶わぬ願望が脳内をちらつく。