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君と偽りのドライブに
第5章 1‐4:手
一時間ほど車を走らせ、サービスエリアでお昼ごはんを食べた。
車に戻りがてら、ふとお土産もの売り場が目に入り、そういえばと彼に申告する。
「私、クッキー買ってきちゃったけど大丈夫だった?」
彼は、あー、と頭を搔いた。
「ごめん、言っとけばよかったな。ばあちゃん病院食しか食えないから、お土産なくていいよ」
ああ、そうなのか――それもそう、なのかな、お見舞いなんて行ったことがないから、よくわからなかった。
うちの祖父母は母方も父方も未だぴんぴんしている。
「んー、じゃあ、クッキーはご家族へのお土産ってことで」
「ご家族って」
彼が笑った。
「お前も知ってる父さんと母さんだよ。あと香澄」
香澄ちゃんは、哲弥の妹だ。
確か今年が大学生最後の年で、実家住み。
「でも私、今日は彼女としてご挨拶に行くんだよ」
魔が差した――と言っていいのだろうか。
私の一言に顔を赤らめる彼を、可愛いと思ってしまったのがいけなかった。
彼の腕に、私は自分の腕をするりと回した。