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君と偽りのドライブに
第6章 1‐5:お見舞い
私はクッキーの紙袋を提げて、花束を抱える彼の後ろを歩く。
最近の病院というのは、薄暗く冷たい陰気な印象はまったくなく、柔らかい空気で満たされているからすごい。
彼がとあるドアの前で立ち止まり、私に目配せしてから、それをノックした。
どうぞー、とドア越しのくぐもった声は、懐かしいものだった。
哲弥が引き戸を開けると――
「有紗お姉ちゃん!」
ああ、香澄ちゃん、綺麗になったなあ、とまるで親戚のおばさんみたいなことを思う。
最後に会ったとき彼女は高校生だったはずだ。
いつの間に、女の子から女性になって、けれど若さゆえのあどけなさも残していて。
この子に負けたくないな、と、五歳も年下の子に私は一体何を考えているんだ。
けれど、こんな可愛い子が妹じゃ、そりゃハードル上がるよなあ、と、僻みも込みで哲弥を窺ってしまう私は醜い。