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君と偽りのドライブに
第6章 1‐5:お見舞い
哲弥は「香澄ちゃん、ここ病院」と窘めながら、少しぎこちなく、私を庇うように病室に入った。
私は彼の陰で、お邪魔します、と挨拶をする。
「えっ、あら、有紗ちゃんなの?」
次にした声は、哲弥のお母さんのものだった。
「相手が有紗ちゃんなら、哲弥、どうしてそう言わないんだ」
お母さんの後ろにはお父さん。そりゃまあ、数日前に決まったことなので。なんて言えない。
「あらあら大きくなって」
ベッドの上でパジャマ姿のおばあちゃんは、記憶より痩せていたけれど、それでも血色がよさそうでほっとした。
「おばあちゃん、お久しぶりです。お元気そうで」
「あらやだ、昔みたいに喋ってよ、他人行儀だわ」
指摘されて気づく。素で敬語が出ていた。私も――緊張していた。