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君と偽りのドライブに
第7章 1‐6:香澄ちゃん
哲弥との関係についてどんな質問攻めが来るかと身構えて、別々の車で移動するあいだ哲弥と打ち合わせをしたのだけれど、夕食のあいだも、そのあと紅茶とともにクッキーをつまむあいだも、聞かれたのは二人の話というよりは、哲弥の生活の話だったり、私の仕事の話だったり、街の様子の話だったり、なんてことはなかった。
お父さんと香澄ちゃんはお酒を飲んだので、私も付き合いで一缶だけほろよいをいただいた。
哲弥もほろよい一缶ぐらいなら飲めないわけではないはずだけれど、頑なに飲まなかった。
有紗ちゃん、哲弥はちゃんとごはん食べてるかしら? というお母さんの質問には、私といるときは食べてるみたいですけどね、という、嘘ではない百点満点の返しができて、内心ガッツポーズ。
その油断が仇だった。
哲弥がトイレで席を外したとき、香澄ちゃんが急に私に向かって身を乗り出した。
「ね、ね、有紗お姉ちゃん」
何、と返す間もなく、
「お兄ちゃんのこと好き?」
ぎくり、と身を強ばらせてしまった。