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君と偽りのドライブに
第7章 1‐6:香澄ちゃん
「す、」
なんて答えるか迷って――私は今、哲弥の彼女なんだと思い出す。
「好きだよ。付き合ってるんだから当たり前じゃん」
それは香澄ちゃんへの返答というより、自分自身に対する言い訳に聞こえた。
何も知らずに香澄ちゃんは、質問を続ける。
「じゃあ、お兄ちゃんのどこが好き?」
こらこら、とお父さんもお母さんも、口では叱りながら、しかし実のところ興味津々に違いなく、口を挟まず私の答えを待っていた。
「哲弥の好きなところかぁ……」
そう呟いて間を持たせながら、私は考える。
真面目なところ?
それがいちばんに思い浮かんだ。
しかし、いや、違うな、と自分ですぐに否定する。
真面目なところは好きだけど、真面目だったら誰でもいいわけじゃない。
じゃあ、優しいところ?
でもあいつ、たまに優しくないし……。
変なところで頑固なんだよね。真面目さから来るときも多いんだけど。