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君と偽りのドライブに
第8章 1‐7:お泊まり
「ここで部屋分けたいなんて言ったら不自然でしょ。私、香澄ちゃんと夜じゅうお喋りする体力ないし」
もうアラサーだからね、と笑うと、同い年だろ、と返された。
「電気消すぞ」
「お願い」
哲弥が電気を消して、布団に入る音がした。
こんなにずっと哲弥といたことなんて、たぶん人生ではじめてだった。
よく遊んでたとはいえ、お泊まりはしたことがなかったし、小学校や中学校の修学旅行はクラスが違った。
もちろん部屋も別だった。
彼は修学旅行の夜に女の子の部屋に遊びにいったり、部屋に女の子を呼んだりするようなタイプではなかった。
「哲弥」
「何?」
「あ、起きてた」
「起きてるよ」
すごく、哲弥が近い。
その事実に口元が緩むのを抑えきれなくて、思わずふふ、と思わず笑うと、
「なんだよ」
不機嫌そうな声が、暗闇の中から返ってきた。
「別に。哲弥と一緒に寝るの、はじめてかもって思って」
「…………」
しばらく沈黙があって、
「そうかよ」
忘れたころに、哲弥は一言だけそう返した。
「おやすみ」
「……おやすみ」
私は次第に眠りに落ちていった。