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君と偽りのドライブに
第11章 1‐10:翌朝
何か声が聞こえた気がして、哲弥が跳ね起きる気配がして、私の睡眠はそこからがようやく本番だった。
目が覚めるともうとっくに十時過ぎで、私が慌てて昨日の服に着替え、階下に降りると、香澄ちゃんがおはようと朗らかに挨拶をしてくれた。
「おはよう、哲弥は……」
香澄ちゃんがくすくす笑って示す先は、トイレ。
続いて、朗らかな朝には程遠い音がした。
「いろいろあったみたいだね、昨夜」
「ええと、まあ」
それなりに……いろいろ、あった、たぶん。
タオルを持ったお母さんがぷりぷりと腹を立てた様子で、通り過ぎざまに私に向かって、朝ごはん食べちゃってねと声を掛けた。
礼を言うと、また足早に去っていく。
トイレの前ではお父さんが、酒の力に頼ろうとするとバチが当たるんだ、と豪快に笑っていて、開いたドアの隙間からは、彼のパジャマの裾が見えた。
リビングのビール缶四本はちゃんと洗ってシンクに干してあって、これはお父さんが片付けたらしい。