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君と偽りのドライブに
第13章 2‐2:ハイキング
山の中腹の駐車場は、六割ほど埋まっていた。
コンビニの袋をがさがさと鳴らしながら、十分ほど緩い坂道を登り、東屋の端っこでお昼ごはん。
屋外でごはんを食べるのに、一年でいちばんいい日なんじゃないだろうかと思うぐらい、心地いいそよ風が吹き、足元に色づいた葉が転がってくる。
それからまた緩い坂道を、お喋りをしながらゆっくり登った。
「なんか、悔しいなー」
「何が?」
足元を見ながら歩いていた彼が、顔を上げる。
「昔は私のほうがよく外に出る子で、体力もあったのに。哲弥は家から出ない子じゃなかった?」
「なんかさ、思えば、学生のころはそれでも何だかんだ週に二回ぐらい強制的に運動する時間があったんだよな」
「あー、体育の授業って、今になって思えば意味あったよねぇ」
「な。社会人になって、それがなくなって、びっくりするぐらい体力が落ちて」
「そういえば、三年目ぐらいのときそんなこと言ってたね。で、ジムの体験行って、挫折してなかった?」
「そうそう。それで、さっき言った先輩と、このあたり回ってるときにたまたま空き時間ができて、ここ登って。それからたまに来るんだよね」
「たまにってどれくらい?」
「一か月に一回ぐらい……夏以外」
彼がそこでふっと顔を上げる。
「だから、来たの久々」
道中、同世代の人や、私たちと同じようなカップルもいるけれど、家族連れや、老夫婦や、犬を連れたおじさんや、ジョギングの高校生や、いろんな人とすれ違う。思ったよりも賑やかな印象だ。もっと閑散としているかと思った。
「いいところだね」
「でしょ」
彼がにっこりと微笑んだ。それは自然な笑顔だった。