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君と偽りのドライブに
第2章 1‐1:突然のディナー
……いやいや、そんなはずはない。
だって、相手は哲弥だよ?
二十年以上傍にいて、今まで恋の「こ」の字もなかったのに……、
「……いないよ」
今さら何を、
「好きな人は?」
私は別に、期待してなんか――
「いない」
どうして、そんなことを聞くの――それが早く知りたくて、けれど知るのが怖い。
そんな、まるで思春期みたいな感覚は、何年ぶりだろう。
しかし、次に彼から発せられた言葉は、私の予想とは微妙にずれたものだった。
「……今週末、空いてる?」
今週末……?
「空いてる、けど……」
彼のがちがちに緊張した面持ちは、まるで告白をする人のようだったけれど、彼の言葉には余分な枕詞がついていた。
「今週末……俺と付き合ってくれませんか」
大事な後半部分ほど尻すぼみにそう言って、彼は深々と頭を下げた。