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君と偽りのドライブに
第14章 2‐3:恋人
夕飯のときにと計画していた告白のやり直しを、どうして前倒したのかという問いに対しては、散々渋った挙句にようやく教えてくれた。
「登ってくるとき、カップルとすれ違ったじゃん」
カップルは何組かいたけれど。どれのことだろう。
「手、繋いでたじゃん」
「……手ぇ繋ぎたかったの?」
「だって……有紗があんまりいつもと変わらないから」
変わらないことを私は心地いいと感じていたけれど、彼はそうではなかったらしい。
「変わってほしいの?」
「いや……そういうわけではないけど……あんまり実感がないというか」
哲弥はそこまで言って、不貞腐れた顔でそっぽを向いた。
あーあ、もう、ほんとそういうとこよ。
「手ぐらい繋げばいいでしょうに」
ベンチに無造作に置かれた哲弥の手を私が包むように握ると、彼は、絞り出すように、駄目でしょ、と言った。
「ちゃんと言うまでは、駄目でしょ」
私の幼馴染みはあまりに純新無垢だった。