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君と偽りのドライブに
第15章 2‐4:律義



「化粧水と乳液は?」

「あ、乳液はない。化粧水は一応。ドラッグストア寄る?」

「ううん、今夜はいい。お泊まり用のやつ持ってきた。次回についてはまた考えさせて。哲弥も乳液したほうがいいよ」

「そうなの? よくわかんなくて……」



 なんか、いいな。こういう日常的な会話。



 あ、それから……、



「あの……あれは、持ってきてない」

「あれ?」

「その……今夜、するなら……」



 恐る恐るそう言うと、彼はちょっと頬を赤らめて、

「買ってあるので安心してください」



 だろうと思った。

 一週間前のあの夜、完全に酔っ払って理性が飛んでいたのに、買いに行こうとした哲弥のことだから。



「ありがとう」

「……いいえ」



 信号が青になり、車が走り出す。
しばらく黙って走ってから、彼がぼそりと、俺がしたいだけなので、と呟いた。


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