この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君と偽りのドライブに
第15章 2‐4:律義
食事を堪能して帰りの車の中、信号待ちで止まったとき、哲弥が
「どこか寄るところある?」
と私に聞いた。
「寄るところ?」
「その……買い物とか」
私が哲弥の横顔を見ると、彼が目を伏せる。
「今日は、その……そのまま、うち、でいいのかなって、思ってたんだけど」
はっきり言葉にしたのはこれがはじめてだった。
私の早合点じゃなくて安心した。
「私もそのつもりだよ」
哲弥がほっと息を吐く。哲弥も同じような心配をしていたのかもしれない。
「うち、化粧落としとかないから。大丈夫かなと思って」
「そのへんはひととおり持ってきたから大丈夫。シャンプーとかは借りる」
「シャンプーとトリートメントはある。いいやつじゃないけど」
「まあ、今夜使ってみて合わなかったら、今度持ってくるよ」
「これがいいってのがあるなら、今のがなくなったときに買い換えてもいいよ。俺、特にこだわりとかないし」