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君と偽りのドライブに
第16章 2‐5:蛍光灯のついた部屋
まだふたりとも引っ越してきたばかりで、この街のことをよく知らなかった頃は、精力的に新しいごはん処を開拓していた。
今ではいつも同じのどこにでもあるチェーン店でぜんぜん構わなくなってしまったけれど、当時はふたりともちょっと気張っていたのだ。
気になるお店にひととおり行き尽くして、どうしようかと思っていたとき、私から、彼か私の家でピザとか取るのもありだよね、と提案したことがある。
そのとき哲弥はやけに渋って、ピザ食いたいならサイゼでいいじゃんと話が流れたのだけれど、哲弥は意識的に私を家にあげるのを避けていたのかもしれない。
はじめて入る哲弥の部屋は、私の家と同じくらいの広さで、けれど私の家よりものが少なくすっきりとしていた。
「お洒落に住んでんね」
先に部屋に上がった私が玄関の哲弥に声を掛けると、
「ブランドを統一すれば何とかなるってネットに書いてあった」
相変わらず無粋な返事が返ってきたけれど、
「無印?」
「無印」
無粋かどうかを今更気にする仲でもない。
むしろ哲弥らしくていいやりとりだと思った。