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君と偽りのドライブに
第3章 1‐2:真意
「ばあちゃんが倒れて……」
彼は食後のコーヒーとともに、ようやく重い口を割った。
「おばあちゃんって、あのよく遊んでくれてた?」
「そう、今も両親と実家に住んでる」
正確には、今現在は入院してるんだけど、と哲弥は目を伏せた。
「元気そうだったのになあ」
と私は哲弥のおばあちゃんを思い起こしたけれど、よく考えたら私が最後に会ったのは、就職が決まった春だ。
もう五年も前。自分の両親だって帰省する度に老いを感じてどきっとするのに、まして。
「倒れたって、どうして?」
「軽い脳卒中。まだぜんぜん、死ぬかもとかって話じゃないし、自分で歩いたりもできるらしいけど」
「ならよかった……けど、心配なことに変わりはないね」
彼の心境を慮ってそう言うと、哲弥は黙って頷いた。
「一昨日の夜、仕事終わってから見舞いに行ったんだけど、体はともかく、……すげえ弱気になっちゃっててさ」
哲弥の表情も重たい。
「俺の嫁も見ないで死ぬんだなんて言うもんだから……つい……彼女連れてきてやるから頑張れということに」
「……彼女、いないの?」
「いたら、有紗にこんなこと頼んでません 」
そりゃそうだ。
さっきから、哲弥の視線が忙しなく彷徨う。