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人妻の愁い(憂い)
第4章 パートタイムラブ…
 ⑤

 わたしは隣の男の指先の愛撫的な動きに感じてしまい…

 疼かせ…

 昂ぶらせ…

 求め…

 いや、拒もうとせめぎ合い…

 揺らぎ…

 葛藤し…

 無意識に男の手を握って動きを止め、ゆっくりと顔を男に向けていく。

「………」
 すると無言でスクリーンを見つめ、固まっていた。

 決してわたしを見てはこない、いや、微動だにしない…

 膝に触れたまま、わたしに手をきつく握られ…
 無言で固まっていた。

「………」
 
「………」

 そのままわたしと男は映画が終わるまでの約30分間…
 その態勢のまま固まっていた。


 そしてスクリーンにエンドロールが流れ始めると…

「ぁ、あのぉ…」

 小さな声で…

「す、すい…ま…せん…でした…」
 と、謝ってきたのだ。

「………」

 しかしわたしは、まだ、そのまま手を掴んでいた…

 いや、本当は動かせないでいたのだ…

「あ、あのぉ…ほ、本当に…ご、ごめんなさい…すいませんでした…」
 更に謝罪してくる。

「え…」

 そんなまだ掴んだままのわたしを見て、男は戸惑いの声を上げ…

「本当にすいませんでした…
 あ、あの、アナタが…アナタのことが…」
 
「え…」

 ゆっくりと顔を男に向けていく…

「あ、あの、前から…
 ア、アナタのことが魅力的に感じていて…」

「え?…」

 え、前からって?…

「あ、あのぉ、コンビニの…
 お、お姉さん…ですよね?…」

 え、コンビニ…のって…

「あの駅前のコンビニのお姉さんですよね?…」

 え、わたしのことを知っていたのか?…

 え、魅力的って?…

 そしてわたしは、その男の言葉できつく掴んでいた手の力が緩んだ。


「ほ、本当に…ごめんなさい…
 あのお姉さんが隣の席にいると分かったら、つい…
 我慢できなくなっちゃって…」

「え…」
 いつの間にかにエンドロールも終わり、パッと館内が明るくなる。
 
「本当にすいませんでした…」
 男はそう言って立ち上がり、掴んでいた手を引き離し、逃げる様に通路側に背をむけ、歩き始める。
 
「あ、あ、ち、ちょっと待って…」

「え…」

「せ、責任を…責任取ってよ…」

「え?、責任て?…」

 その言葉は…

 無意識に出たのだ…

 ただ…

 男と離れたくなかっただけだった…




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