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淫魔の宿へようこそ
第2章 訪ねてきた料理人
と、ニコラスが言い終わらないうちに……少年が彼の目の前でがくっと膝をつきました。
「きゃっ!!??」
驚く彼を他所に、少年の両手が彼の手を包み込み、ぎゅっと握りしめてくるではありませんか。
突然のことに言葉を失う彼をよそに、少年は熱心に語りかけてきました。
「………誰かが来るのを待っていたんだ」
そんな言葉を紡ぎながら、彼は今にも泣き出しそうな表情を浮かべていました。
「一体ど、どうしたの…?」
先ほどから吠えていた犬でしょうか。
それが走り寄ってきて、少年の周りを回り始めました。
「ぼ、僕……」
「うん?」
「お腹が……空きすぎ…て……」
「は?」
それだけ小さく呟いた少年は力無くパタリと床に倒れ込みました。
「お、お腹?」
「うう……もう、動けない……」
少年はピクリとも動きません。
ニコラスは慌ててしゃがみこみ、倒れた体を揺すりますが反応はありません。
ただその口元だけが微かに動いていました。
「た、食べ物を…何か……火を通したものを…」
「ま、真面目に? ちょ、ちょっと待ってね!! ええと」
ニコラスは大急ぎで頭を働かせました。
この建物のどこかに厨房があるはずです。
食料庫のようなものもあるかもしれません。
ぐいぐいと服の端を引っ張られるのに気付くと、犬が彼をどこかに案内してくれようとしています。
よく見ると少年の体はあまりにも細く、腕も足も折れてしまいそうで、見ているこちらがハラハラしてしまうほどです。
黒い体に白い模様がある大きな犬は少年の身を案じているようでした。
「待ってて、すぐに戻ってくるから!」
ニコラスはすぐさま立ち上がると犬と一緒に駆けだしていきました。