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淫魔の宿へようこそ
第2章 訪ねてきた料理人


けれども呼んでも呼んでも建物の主は姿を現しません。

ニコラスは不思議に思い、そっと扉に手のひらを沿わせてみました。

すると


キイ………


細く軋んだ音と共に開き戸から隙間の様子が垣間見えました。

どうやらここは開いていたようで、その中からは

「犬の鳴き声………?」

わんわん、わん!! 

ひっきりなしにけたたましい吠え声が聞こえてきます。


しばらくその場でたたずんでいたニコラスは迷いましたが、そっと家の中に入っていきました。

「ごめんください……」


そこは広いロビーでした。

天井からはシャンデリアを模した照明器具がぶら下がり、床には深紅の絨毯が敷かれています。
正面の壁際には階段があり、二階へ続いているようです。
壁には大きな鏡が何枚か飾られていました。

「………?」

鏡に映る自分の姿を目にした途端、彼は息を呑みます。

「きゃあっ!?」

自分の後ろには誰もいないと思っていたのですが、いつの間にか男の子が立っていたのです。

白っぽいブロンドの髪と翡翠色の瞳。
それは凛々しさと初々しさを併せ持った雰囲気の少年でした。

「ようこそ我が館へ」

声変わりもまだの、高く弾むような声でした。

「あ、あの、君は?」

「僕はこのホテルの主人だよ」

少年はつられそうな笑顔で答えます。

「じゃあ君…貴方がここの支配人さんなんですか?」

「そうとも言えるかな」

「そ、そうなんですか……! あ、わた、俺は、ここで働かせてもらいたいんだ」



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