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淫魔の宿へようこそ
第2章 訪ねてきた料理人
***
「ふう……これ、で、どうかな」
ニコラスは額の汗を拭い、エプロンを外しました。
テーブルの皿の上には湯気の立った料理が並んでいます。
今ほどその匂いで目覚めて起き上がった少年は椅子に座り、それらをじいっと見つめていました。
「この犬は不思議ですね。 行きたい所や欲しいものを口に出すたびに、そこの場所へ案内してくれて」
彼が見つけた食材は全て、犬が鼻先で示す方向にありました。
それなのになぜこの少年は餓死寸前だったんだろう。 ニコラスは不思議に思いました。
即席でニコラスが準備したのは、トマトとオリーブのパスタに魚介類を使ったサラダ、肉汁たっぷりのローストビーフには粒マスタードのソースを添えました。
「きゅぅ~ん……」
犬の切ない声が部屋に響きました。
少年を見上げて心配しているようです。
「マエロ。 心配かけてごめんね」
少年は犬に向かって労りの言葉をかけ、早速フォークを手に取り料理を口いっぱいに頬張りはじめました。
「……美味しい」
ひと言言った後に咀嚼を繰り返す、それはそれは見事な彼の食べっぷりでした。
食べるのが早すぎていつものを噛んでいるのかと思うほど。
そしてそんな少年の様子をみているうちに、ニコラスはなんだか自分まで嬉しくなってしまいました。
料理人を志して良かったと思う瞬間です。