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淫魔の宿へようこそ
第2章 訪ねてきた料理人
天井からは美しい飾り付けをされたランプがいくつも垂れ下がり、壁には額縁に入れられた淡色の絵画が飾ってあります。
床一面の大理石にはふかふかのソファや椅子やテーブルが置かれています。
それから巨大な窓を覆うカーテンはシルクのような光沢があってとても触り心地のよさげな物でした。
「そこの鏡を見てごらん」
「か、鏡、ですか?」
ニコラスが部屋の奥のそれを覗き込みました。
「えっ……?」
そこには長い茶色の巻き毛を揺らした女性の顔とドルードが映っています。
「とっても可愛い女の子だねえ?」
ドルードはニコニコしてニコラスと一緒に鏡に見入っています。
「え、あ…あの、これ。 わた、俺っ!」
「ふふふ、どうしちゃったのかなー?」
いたずらっぽい笑みを浮かべているドルードをみてニコラスの顔はどんどん真っ赤になっていきます。
「ん、どうしたのかなあ」
「い、いえ、なんでもないんですっ!! ちょっと驚いただけでっ? な、なんですか、この作り物の鏡?」
ニコラスは慌てて部屋を出ようとしましたが、突然ドルードに腕を掴まれてしまいました。
「過去を映す鏡だよ。 そうだね、あれは二、三年前辺りってとこ?」
振り返ると、いつの間にか間近に来ていたドルードが彼の瞳を覗き込んでいます。
「君は男の子なのにねえ?」
ニコラスは固まったまま無言でした。
「隠さなくっていいんだよ。 ニコラス…もしかして本当は女性名でニコル、とか?」
「………」
「言いたくないかな?」
ドルードの手がするりとニコラスの頬を撫でました。