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淫魔の宿へようこそ
第3章 ホテルのお仕事


昨日のそんな会話を思い出しながらニコルは首を捻ります。

「そう言われてみれば、確かに……ここはお掃除も行きも届いているみたい。 でも、まさかあのドルードさんが自ら働いている…なんて?」

部屋を出たニコルが歩きながら顎に指を当ててうーんと考えていると、ヒュ…ッと自分の目の前を小さな何かが通り過ぎていきました。

「え……?」

ニコルは見間違いかと思い、ごしごしと手の甲で自分の目を擦りました。


ヒュ…ッ。
ヒュッ……。
ヒュッ。


それはニコルの錯覚ではなく、猫の背丈程の大きさの、人の形をしたものでした。

「え、え…っ? よ、妖精っ?」

ニコルは咄嗟にそう思いましたが、妖精にしては羽根がないし何だか顔が……?

言ってしまえばそれらは一様に、どこか凶悪そうな顔をしていました。
細い体躯につり上がった目、細長い手足と尖った耳。
長い鼻と大きく裂けた口は何というか。


「………彼らは小鬼、エビルともいうよね」

いつの間にかドルードがニコルの横に立っていました。

「ド、ドルードさん、おはようございます。 あれ…は」

「おはよう。 僕の使役だよ。 あんな外見だけどよく働くでしょ」

シエキ?
その意味はニコルにはよく分かりませんでしたが……確かに。

それらはせかせかと動き回っては花瓶の後ろに回り込み埃をはたいて
階段の手すりを滑り降りてワックスをかけたりと。
数十はいるであろう目の前のエビルとやらは、働きアリ並に実にいい仕事をしているように見えました。



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