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淫魔の宿へようこそ
第3章 ホテルのお仕事
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開け放した窓からは初夏をあらわす爽やかな風が吹いてきます。
このホテルを建てた際には無かった木々が三階の窓を抜けてライム色の葉を付けた枝を揺らしました。
〈ドルード! 人の世界に住んだらね、宿屋をやりましょう? 小さな洋館で、私は貴方とお客様のために料理をするわ。私は貴方と違って食材に触れるんですからね〉
「そう言っていた君は一体、いつ目覚めるんだろうね……」
窓辺で自室の長椅子に腰掛けていたドルードが独り言を言いました。
昨晩から幾度となく、ドルードの頭の中に彼女が現れました。
普段は彼の中の彼女が色褪せないよう意識的に思い出していたものですが、昨日から自分の様子がおかしいように感じていました。
「変わったことといっても、人間の女性なんて今まで何度も…」
深く考えようとする前に、ドアが外側からノックされる音が聞こえました。
「ドルード様。 お部屋に籠ってらしたのですか。仰せどおりニコル様を食糧庫に案内してきました」
マエロが彼の元にトコトコ歩いてきました。
外に視線を向けたまま、ドルードが髪の間にくしゃりと指を入れます。
「あー、うん。 ありがとう。 さすがにね。 家の中に下着も身に付けてない無防備な女の子がいるのは、いくら僕みたいなのでもさ、インキュバスとしては少しキツいみたいなんだよね……」