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淫魔の宿へようこそ
第5章 情動の意味
ニコルは恥ずかしくなって顔を背けようとしましたが、頬に沿わされた彼の手がそれを許しませんでした。
「は、離し……て」
至近距離で見つめられると目眩がしそうになりました。
「駄目だ」
彼ははっきりと言いました。
今の体勢だとどうしても身体が密着してしまいます。
ニコルの目に涙がじわりと溜まりました。
「そんな風に君が怯えるから余計に相手を刺激するんだよね。 分かってる?」
ニコルの手首に彼の指が回っていました。
身体の震えが止まりません。
「君はとりあえず僕のものになっておきなよ」
「は…」
「それがきっと一番いいと思う」
まさかそんなことを言われるとは思っていませんでした。
驚きのあまり硬直していると、不意にニコルの唇に柔らかいものが触れました。
(あっ!)
キスされたのだと気付きました。
首をすくめて抗おうとするとゆるりと彼がついてきます。
何度かささやかな鬼ごっこを繰り返し、とうとう捕まってしまったニコルの震える唇を彼の舌が慰めます。
それはまるで「大丈夫だよ」と、怪我をした子供に手当をしているかのようでした。
そんな風にふんわりとした冷たいその感触は、むしろどこか心地良いような気さえしました。