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淫魔の宿へようこそ
第6章 ニコル
「お腹が空いたでしょう? ドルード。 貴方の大好きな魚介とトマトのスープよ」
ビクッと肩を揺らした彼がこちらを振り向きましたがニコルは彼のその顔を見てビックリしてしまいました。
何の感情も浮かべていませんでしたが、その頬には次から次へと涙が流れ落ちているのです。
「……ニコル?」
(ニコル………)
ニコルは彼からそう呼ばれるのは酷く違和感がありました。
「……稀にね、無意識下で体を繋ぐと相手の記憶の中に入り込むことがあるって聞いたことがある。 僕が言うなって話だけど。 でも、こんな所に来ちゃ駄目だよ。 ここはね」
「違うわ、ドルード。 私は」
ニコルのその言葉の先が尻すぼみになって消えました。
「ここは僕の大切な人が眠る場所なんだから……」
棺の傍に膝をつき、ドルードが愛おしげな表情で頬を撫でたその人物は……肉のごっそりそげ落ちた人骨でした。