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淫魔の宿へようこそ
第6章 ニコル
「その接尾語どうにかならない? お前達は少し休んでなよ」
クスクス笑いながら厨房に入ってきたドルードが手を洗い、エプロンを身に着けました。
エビル達がぴょん、ぴょんと彼の両肩に止まって休憩します。
こんな彼は久し振りで新鮮でした。
というよりも、ある意味以前より親しくなって「ニコル」として扱ってくれている。 それが彼女にはとても嬉しく思えました。
「では私はホイップクリームを混ぜますね」
「……ん」
カシャカシャと音を立てて混ぜ、クリームを泡立てていきます。
……小さな頃から仲の良い両親がこうやって厨房を切り盛りする姿を見てきたニコルにとって、こんな光景は夢のようでした。
「嬉しそうだね、ニコル?」
いつか自分も好きな人が夫となり、家族でお店が出来たらどんなにか。 そう夢に描いていた自分にとって儚くも幸せなひと時です。
「はい! ドルードさんには感謝」
と、言いかけ、ニコルのすぐ背後にひたとドルードの体があることに気付きました。
(え……っ?)
「不思議だよね。 あんなにサラサラしてた物がこんな風に濃厚そうなクリームに変わるのって」
ごく普通の会話です。
ただし耳に口が付きそうなほどの距離で低く鼓膜に響いてくる、彼の声音は昼間のドルードではなく。
「……あ、あの。 ドルード…さ」