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淫魔の宿へようこそ
第7章 背徳を覆う淫魔の愉悦
ですのでマエロはぎこちないながらも、当たり障りなく彼に返事をしました。
「そういう訳では……ですが、私たちは元より卵より生まれる身ですし………それに加えて、多分私の場合は、幼少の彼女を知っているので、余計にそう思ってしまうだけかもしれません。 もう十年も前ですかね。 人間界に来たばかりの私に、ニコル殿が食堂で余った食事を私に分け与えてくれていたのは。 その後に引っ越して会えずじまいになりましたけど」
「ああ、そうだったね……あれは君がまだ話せない時だっけ。 そういえば、なんでそれをニコルに伝えないのさ?」
「それは……まあ」
マエロは曖昧に言葉を濁します。
(空腹で食堂の残飯を漁っていたことなんて、彼女に思い出して欲しくないからですね……)
そんな事はヘル・ハウンドとしてのプライドが許しませんでした。
それからマエロはキルティングされたティーコゼーでお茶のポットを包むと、
「ではドルード様。 くれぐれもごゆっくりお休みください」
丁寧に噛んで深めるように言い含み、ティーカップを二つテーブルに配してからドルードの部屋を後にしました。
ドルードはそんな彼の後ろ姿をじっと見送り心苦しそうに軽く目を伏せました。