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千一夜
第10章 第二夜 パヴァーヌ ⑥
 高校を卒業して私は主人と結婚した。父だけでなく母も私たちの結婚には大反対だった。母が反対することはわかっていた。姉と結婚するつもりだった男が、姉がいなくなると妹に乗り換えたのだ。母が私と主人の結婚を許すはずがない。その反対を押し切って、私は主人の住むアパートで主人と暮らし始めた。
 私の父の嫌がらせは主人の実家にも及んだ。主人が未成年であった自分の娘に手を出したと主人の父と母にわざわざ知らせたのだ。主人は主人の実家から絶縁された。後に母から聞いた話だが、主人の両親は父の家の玄関先で土下座をして謝ったそうだ。
 大学院を出て主人は外資系の企業に勤めた。そのせいか、主人の勤め先まで父の力は及ばなかった。ところが……。
 私が二十歳のとき翔太を授かった。私が妊娠したことをどこで知ったのかわからなかったが、父は民事裁判をちらつかせて私と主人を脅した。実力さえあれば外資系企業は個人の裁判にも目を瞑る……というわけにはいかなかった。主人は私の父の力に屈した。
 一つ、性を金子とすること。二つ、父と母の住む家に私たちも住むこと。三つ、主人が今勤めている会社を辞めて、父の経営する会社で働くこと。
 主人は三つの条件をすべてのんだ。
 主人は可哀そうだった。父の家で主人は徹底的に無視された。父にも母にも、朝会ってもおはようと挨拶されることがなかったし、父も母も主人と一緒に食事をすることはなかった。
 ただ、翔太が生まれてときが経つと少しずつ父と母に変化が現れた。初孫が男であったので、気の早い父は、孫の翔太に会社を継がせると言い始めたのだ。そして、その繋ぎ役の主人の仕事ぶりが評価された。
 東大の大学院まで出たうちの婿は、勉強ができても仕事一つできないやつ、とレッテルを張るつもりでいた父であったが、主人の仕事ぶりは見事に父の期待を裏切った。
 主人は学歴をちらつかせて威張るような人間ではなかったし、創業家の一族ではあったが、客観的に会社の事業を見つめることができた。誰に対しても公正で人当たりもよく、取引企業からも信頼された。ときに傲慢になる父より社員の心は父ではなく主人に向かった。
 その結果三年で私の父は会長職に退き(追いやったと言った方がいいかもしれない)、私の主人が会社の代表取締役に就いた。
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