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千一夜
第10章 第二夜 パヴァーヌ ⑥
 幸せだった。この幸せが永遠に続けばいいと思った。永遠に。
「ねぇ健太」
「何?」
「私の夢を聞いてくれる?」
「夢? 何だよそれ」
「お願いだから聞いてよ」
「ああ、わかったよ。なんでも話してくれお姫様」
「私、ヨーロッパの大きな舞踏会に出たいの。もちろんパートナーはあなたよ」
「踊れないよ俺は」
「練習してよ、私も習うから」
「今から?」
「そう、今から」
「面倒だな」
「何が面倒よ。私のお願いなんだから。私もうドレス決めてるのよ。白のイブニングドレス。健太はもちろん燕尾服ね」
「ちょっと待った。白ってまずいだろ」
「まずいわね。でも私の最初で最後のお願いよ。だから絶対にドレスは白」
「最後だなんて縁起でもないこと言うなよ。飛鳥の願いはこれからも続くさ」
「ありがとう」
「パヴァーヌか」
「パヴァーヌ?」
「そうパヴァーヌ。日本に帰ったらダンス教室に通うか」
「ありがとう」
 私は主人にキスをした。そのとき来客を知らせるチャイムが鳴った。枕元の時計を見ると時間は十一時を少し過ぎていた。
「お義父さんかな」
「こんなに遅く?」
「明日はお義父さんたちとゴルフだ。多分そのことで何かあるんだろ」
「そんなの電話で済ませればいいのに。明日はエロかんも一緒なんでしょ」
「ああ」
「じゃあ無視してよ。折角私の夢の話をしていたのに」
「そういうわけにはいかない」
 インターホンのモニターを確認するために主人はベッドから出た。数秒、いや十数秒たっても主人に反応がない。まさか強盗? ここは治安のいいところでセキュリティもしっかりしている。それに強盗だったら、家に入り込むのにインターホンなど鳴らさない。
「誰? 父さん?」
「……」
 主人は無言だ。
「ねぇ誰なの?」
 私はそう言ってベッドから起き上がった。
「来るな!」
 それは初めて聞く主人の声だった。
「一体どうしたの?」
「絶対にここに来るな!」
 主人の背中が震えていた。こんなに動揺する主人を見たことがない。銃を持った強盗? いや違う。もしそうなら主人は私に地下室に逃げろと言うはずだ。翔太と俊太を連れて地下室に行けと言うはずだ。でも主人はそうは言わなかった。
 不安で心が押しつぶされそうになった。
 主人に来るなと言われたが、私はベッドを出た。恐る恐る主人のところに向かった。

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