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千一夜
第12章 第三夜 春の雪 ②
「構いませんよ。ゆっくり温まってください」
「ありがとうございます。お蔭さまで体は温まりました。どうぞ」
 草加はそう言って、場所をその女に譲った。
「ここに座れば二人温まれますね」
 女は隣を指してそう言った。
「いいんですか、俺なんかが隣に座っても」
「もちろん。ここは私だけのものではありません」
「ありがとうございます」
 草加は女の隣に腰を下ろした。草加も女も薪ストーブの方に手をかざした。
「大変だったようですね。急に雪が強くなったみたいで」
 女が草加を見てそう言った
「死ぬかと思いました。ホワイトアウトに出くわして方向が全くわからなくなったんです。おまけに気が付いたときは低体温症で、正しい判断ができなくなっていました。まじでやばかったです。あっ、草加隼太です」
「クサカハヤタ……私は沖野マリア。山は全くのド素人です」
「素人?」
「ええ」
「……」
 草加の中に違和感が芽生えた。この山は初心者が選んで登るような山ではない。それに雪が降らなくても四月は雪が残っている山なのだ。この山は初心者なら避けなければらないはず。それに沖野という女の持ち物がおかしい。日帰り用のザック、というか小さなリュック一つなのだ。まさかこの山を日帰りで登るつもりだった? いや、初心者ではこの山を日帰りで登ることはできない。
「どうかしました?」
 草加の様子を訝しく思ったのか、沖野がそう草加に訊ねた。
「いえ、……あの、飯食っていいですか?」
 体が温まると、草加は急に空腹感に襲われた。
「ふふふ、どうぞ」
 草加は、ザックから食料を取り出した。すぐに食べることができるインスタントの袋麺。水とチョコレートそしてジップロックに入れた黒糖。
 ユニフレームのシェラカップに水を少し注ぐ。プリムスのバーナーでそれを温める。少し温まってきたところで草加はチョコーレートを入れた。カップの中のチョコレートがどろりと溶けてく。ぐつぐつ沸騰したところで黒糖を一かけらカップに落とす。フォークでかき回して出来上がり。
 沖野はその様子をじっと見ていた。カップが二つあれば、出来上がったものを二つに分けて「どうぞ」と言えるのだが、山登りは余計なものは持たない。たとえグループで登山しても自分のザックには自分のものしか入れない。ザックにかさばるものは入れない、ザックを重くしない、は登山の基本中の基本だ。
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