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千一夜
第12章 第三夜 春の雪 ②
 チョコレートの甘い香りが漂う。
「あの、よかったらどうぞ」
 草加はシェラカップを沖野の前に出してそう言った。
「いいんですか?」
「どうぞ。ミルクの代わりに水なんで美味しくないかもしれませんが」
「ありがとうございます」
 沖野はそう言って草加からカップを受け取った。
「熱いから気を付けてください」
「はい」
 沖野はカップに鼻を近づけてチョコレートの香りを楽しんだ。それからふーふーとカップの中のホットチョコレートを何度も冷ましてから飲んだ。
 草加はその様子をじっと見ていた。沖野の隣に小さなランタンがあった。草加が沖野を見つめる。金髪ショートヘアー。山ガールというより山ギャルと言った方がいい。沖野の大きな目と合うと草加はドキリとする。一目ぼれ? 草加はそんなこと思い苦笑した。でもこの山ギャルはいくつだろうか? 草加には幼く見える。だからと言って高校生ではないだろう。大学生か……。
「二十九です」
「はぁ?」
「私二十九です」
「あっ、俺も二十九です」
 心の中をよまれた。この沖野という女、超能力でもあるのか、草加はふとそう思った。そしてもう一つ。同い年の女が一人で登山……そして避難小屋で偶然出会う。俺にもチャンスはあるか? 草加はまた苦笑した。
 俺は土壇場に弱い男だ。だからいつも好きな女は誰かに取られる。夢を見るのは悪くないが、夢にすがるのはやめよう。草加はそう自分を戒めた。
「これ美味しいです」
 沖野が大きな目を草加に向けてそう言った。
「あの、ひょっとしたら沖野さん、お腹空いてるんじゃないですか?」
「恥ずかしい……わかりました?」
「ラーメン食べます? インスタントだけど」
「いいんですか?」
「醤油と味噌、どっちがいいですか?」
「じゃあ醤油」
「わかりました」
「ありがとう」
 草加はクッカーに水を入れ、それをバーナーにかけた。沸騰したところで麺投入。出来上がり前に袋のスープを麺に乗せる。かき混ぜれば終了。
「どうぞ」
「ありがとう」
 沖野はシェラカップを脇に置くと、クッカーを持った。草加がフォークを渡す。
 草加がシェラカップを覗くとホットチョコレートはもうなかった。
「温かい食べ物は体だけでなく心も温めます」
「ふふふ」
「おかしいですか?」
「いえ。ラーメンも美味しい」
「それはよかった」
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