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千一夜
第13章 第三夜 春の雪 ③
 草加の頭から沖野が離れない。ホットウイスキーを作っているときも、こうしてそれを飲んでいるときも。
 だが沖野の事だけ考えている場合ではない。明日下山の予定だが、仮に雪でも降っていたら山を下りることができなくなるかもしれない。たとえ雪が降っていなくても雪がどれだけ積もっているかも気になる。
 まさかこれほど降るとは思っていなかったのでスノーシューは持ってきていない。そして沖野の装備が不安だ。山を下りることができるだろうか。
 もし明日下山ができなかったら、食料と水はあと二日(もってくれればいいが)。嫌なことだけが草加の中を駆け巡った。
 正常だ。俺の頭は正常に働いている。山登りはアクシデントが起こっったら最悪のことを考える。それをどうやって乗り切るかを考えてこそ本当の山登りだ。少なくとも沖野だけは無事に下山させる。草加は自分を奮い立たせた。
 シミュレーションが草加の頭の中で繰り返される。万が一の場合どうすれば最善か。草加は何度も何度も頭の中で繰り返した。
 今日会ったばかりの女に、俺は本当に恋をしたのだろうか? 無事に山を下りたら、おそらくもう永遠に出会うことはないかもしれない。電話番号や住所を訊ねてみる? いやいやそれはコンプライアンス的にまずい。それにそういう手段はなんか古臭い。今ならLINEの交換か。でもLINEなんかやってないし、やっぱり山を下りたらそこで終わりだ。草加はそんなことを考えながらホットウイスキーを飲んだ。
 それにしても幸運な女だ。よくこの雪を避けてこの避難小屋にたどり着けたものだ(雪が沖野を避けたのかもしれない)。きっと沖野が見たという妖精が彼女を守ったのだろう。今度は俺が守る。必ず俺が沖野をこの山から下ろす。草加はそう決意した。
 雪の中をしばらく歩く。問題は沖野の体力だ。雪があるとないでは体も心も疲労の具合が異なる。まして沖野は登山初心者だ。だからと言って自分が映画やテレビのようにここから沖野を背負って下山することなどできない。それは命を繋ぐザックを捨てるということになるからだ。
 ただどのくらいか下りて、積雪が少なくなったところからなら可能かもしれない。たとえあたりが真っ白でも、視界さえ確保できれば、俺は沖野を山から下ろすことができる。五年のブランクはあるが何度も登った山だ。草加に希望の光が射し始めた。
 そのときだった。
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