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千一夜
第13章 第三夜 春の雪 ③
「草加さん、寒くないですか?」
 寝袋に包まれた沖野が草加を見てそう言った。
「大丈夫です。ここも温かいですから」
「この寝袋大きいからもう一人は入れますよ」
「はぁ?」
 草加は沖野が何を言っているのかわからなかった。
「見てください、もう一人入れると思いますよ」
 沖野は寝袋の空いているペースを軽くたたいた。
「その寝袋一人用なんですが」
 草加は寝袋をじっと見た。確かに沖野の隣にまだスペースがある。でも有りえない。手品でも使わない限り寝袋は大きくならない、いや手品を使っても寝袋が大きくなるなんてあるはずがない。ザックから寝袋を出したのは自分だ。今までに二人用の寝袋なんて買ったことなんてない。だから沖野を温めている寝袋は一人用なんだ。草加は何度もそう自分に言った。
「どうです? まだ入れるでしょ」
「そうだけど……それ一人用なんですよね」
「ひょっとして私と一緒は嫌なんですか?」
「とんでもないです!」
 草加は声を大きくして否定した。沖野の寝袋に自分が入れるなんて奇跡だ。奇跡……。今まで自分に奇跡が起こったことなんて一度もない。ということは俺はもう死んだのか? そうだ俺はもう死んだんだ。ならばここは天国だ。地獄に沖野はいない。草加はそう思った。
 この女と一緒なら現世に未練はない……おそらく。
「どうぞ」
 沖野が草加にそう言って誘った。
「失礼します」
 ここが天国でも礼儀だけは忘れてはいけない。草加はアウターシェルを脱いで沖野の隣に潜り込んだ。温かかった。そして寝袋にしみ込んだ自分の匂いがした。そしてもう一つ、沖野の汗の匂いを感じた。とてもリアルな女の汗の匂いだった。
 まずい、草加のあそこ、つまりペニスが反応したのだ。天国でも勃起するのか、それも悪くないな。草加は沖野に背を向けてそう思った。
 もう眠れない。草加は覚悟した。背後にいる沖野の気配を消すことなんてできない。だからずっと沖野のことが頭から離れない。睡魔は俺の手を引いたりしない。それでもいい、どうせここは天国なんだ。じたばたしても無意味だ。草加は観念した。
 天国一泊目の夜がインスタントラーメンだなんて、何だか味気ない。明日の朝は沖野が作った朝食が食べたい。和食、洋食、どっちでもいい。まぁ、それは無理か。明日の朝が楽しみだ。天国二日目の朝が俺は待ち遠しい。草加は沖野と一緒の寝袋の中で苦笑した。
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