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千一夜
第13章 第三夜 春の雪 ③

「女が朝食を作るなんて誰が決めたんですか?」
「はぁ?」
また心の中をよまれた。草加は不思議だった。でもここは天国なんだからそういうこともあるかもしれない、と思うことにした。でも自分は沖野の心の中をよむことができない。天国もなんとなく生きづらさそうだ。
「草加さん、和食と洋食どっちが好き?」
「朝食のことですか?」
「そう、朝食」
「できれば和食、でも正直どちらでも構いません。いつもはトーストとコーヒーで済ませてます」
「栄養とか考えてます?」
「全然。取り合えず腹が満たされればそれでいいんです。朝は時間がないですから」
「今度……」
「今度?」
「今度作ってあげましょうか? という言葉を期待してます?」
「……少しだけ期待しました」
「ふふふ」
「……」
沖野から揶揄われるのは構わないが少しまずい状況だ。いやものすごくまずい。草加は沖野に背を向けて寝ているのだが、沖野は草加の方を向いている。そのせいで沖野の声は草加の耳元近くで聞こえるし、草加の肩に沖野の手が置かれる。もっとまずいのは草加の背中に何だか柔らかいものが当たる。
「学校の先生ってエッチなんですね」
「えっ?」
「今風に言うとエロ教師」
「俺が……ですか?」
「ずっと私のおっぱい見てたでしょ?」
「……」
草加は沖野の言葉にピクリとした。
「エロ教師」
「すみませんでした!」
小屋の外にも聞こえそうな草加の声だった。
「草加さんは、生徒さんが謝れば、その生徒さんを許す先生ですか?」
「許します……多分許します。いや、絶対許します」
「確かお勤めは○○中学ですよね。二年三組」
「その通りです」
「全部生徒さんたちに言います。草加先生が私のおっぱいをガン見していたって。草加先生がエロ教師だということを」
「それだけは勘弁してください。それとガン見ではなくチラ見です」
草加の声のトーンが一段も二段も下がった。そして天国でもドラマのようなやり取りがあるのかと草加は思った。
ドラマなら次は金品を要求されるのだが。金品なるものをそもそも草加は持っていない。教師の給料などたかが知れている。給料のほとんどは山につぎ込まれるために、草加の車は二十年落ちの軽自動車。草加の車を見て生徒たちは指をさして笑う。
「おっぱいチラ見のエロ教師、草加隼太!」
「すみませんでした」
「はぁ?」
また心の中をよまれた。草加は不思議だった。でもここは天国なんだからそういうこともあるかもしれない、と思うことにした。でも自分は沖野の心の中をよむことができない。天国もなんとなく生きづらさそうだ。
「草加さん、和食と洋食どっちが好き?」
「朝食のことですか?」
「そう、朝食」
「できれば和食、でも正直どちらでも構いません。いつもはトーストとコーヒーで済ませてます」
「栄養とか考えてます?」
「全然。取り合えず腹が満たされればそれでいいんです。朝は時間がないですから」
「今度……」
「今度?」
「今度作ってあげましょうか? という言葉を期待してます?」
「……少しだけ期待しました」
「ふふふ」
「……」
沖野から揶揄われるのは構わないが少しまずい状況だ。いやものすごくまずい。草加は沖野に背を向けて寝ているのだが、沖野は草加の方を向いている。そのせいで沖野の声は草加の耳元近くで聞こえるし、草加の肩に沖野の手が置かれる。もっとまずいのは草加の背中に何だか柔らかいものが当たる。
「学校の先生ってエッチなんですね」
「えっ?」
「今風に言うとエロ教師」
「俺が……ですか?」
「ずっと私のおっぱい見てたでしょ?」
「……」
草加は沖野の言葉にピクリとした。
「エロ教師」
「すみませんでした!」
小屋の外にも聞こえそうな草加の声だった。
「草加さんは、生徒さんが謝れば、その生徒さんを許す先生ですか?」
「許します……多分許します。いや、絶対許します」
「確かお勤めは○○中学ですよね。二年三組」
「その通りです」
「全部生徒さんたちに言います。草加先生が私のおっぱいをガン見していたって。草加先生がエロ教師だということを」
「それだけは勘弁してください。それとガン見ではなくチラ見です」
草加の声のトーンが一段も二段も下がった。そして天国でもドラマのようなやり取りがあるのかと草加は思った。
ドラマなら次は金品を要求されるのだが。金品なるものをそもそも草加は持っていない。教師の給料などたかが知れている。給料のほとんどは山につぎ込まれるために、草加の車は二十年落ちの軽自動車。草加の車を見て生徒たちは指をさして笑う。
「おっぱいチラ見のエロ教師、草加隼太!」
「すみませんでした」

