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千一夜
第15章 第三夜 春の雪 ⑤
 遠くから誰かが俺を呼んでいる。「草加隼太、草加隼太」と呼んでいる。
 いや違う「草加隼人」とは呼ばれていない。眠りの中で草加は耳を澄ました。隼太と呼ばれているようだが、どうにも声が小さくて聞き取ることができない。
 疲れて休んでいるのだ。声なんか俺に掛けるな、と草加は思った。でも小さな声はしつこく草加を追いかけた。
「隼太、隼太」
「うるさい」
 草加は眠りの中で声の主に向かってそう言った。
「エロ隼太、エロ隼太」
「……」
 草加は自分を侮辱する言葉に眠りながら顔をしかめた。
「起きろエロ隼太、エロ隼太」
「……」
 我慢の限界だった。草加は必死になって目をこじ開けた。すると小さな子供が草加を覗き込んでいた。
「ママ、パパ起きたよ」
 小さな子供はそう言った……。
 草加は寝ぼけた頭の中を急いで整理した。ママとはこの子供の母親のことだろう。パパが起きたと話していることから、子供の呼びかけに起きた自分は、この子供のパパになる……えっ!
 結婚していない俺がいつ父親になったんだ!草加は心の中で叫んだ。
「サンキュー良太」
 恐らく子供のママの声。この声に聞き覚えがある。ていうか良太って誰? 俺の子供? まさか……。草加は混乱した。
 子供が草加の顔で遊び始めた。草加の鼻を摘まんだり、頬を引っ張ったりしている。
「あの、止めてもらえませんか」
 草加は子供にそう言った。
「ママ、パパが止めてもらえませんかって言った」
 草加は、ママという人物にいちいち自分の状況を報告する目の前の子供が鬱陶しくなった。
「良太、パパの顔で遊ぶのはダメよ」
 そうそう、親ならそう言って子供を躾けなければならない。草加はまた目を瞑り眠りの世界に潜り込もうとした。
「ママ、またパパが眠っちゃった」
「良太、パパの顔引っぱたいていいわよ」
 ぴしゃりと遠慮ない強さで草加は頬を子供に叩かれた。我慢もここまで、草加は起き上がった。
「いい加減にしろ!」
 声を大きくして草加は子供を叱った。子供は幼稚園の年中? それとも年長?
「ママ、パパが怪獣になった」
 怪獣じゃなくてウルトラマンだろ、と草加は心の中でつっこんだ。いやいやそれもそうだが、ママって誰? 草加はまた心が乱れた。
 自分はまだ結婚なんかしていない。もちろん結婚していなくても子供は生まれるが、そういう行為を最近した覚えがない。
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