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千一夜
第16章 第三夜 春の雪 ⑥
 草加は高校生の頃こう思っていた。結婚したら毎晩嫁さんを抱くと。そうなれば空しい自慰行為ともおさらばだ。ズリねたのAVを入手する手間も省けるはずだし、ティッシュペーパーの使用量も大幅に削減する(そんなことはなかったが)。いや、そういうことではない。女の肌に触れ、女の匂いを嗅ぎ、女のあそこに挿入する。自分の手で握られる肉棒は妻となる女の手で握られる。想像するだけで草加のペニスは硬くなった。
 愛無くして結婚はあり得ない。だが、その先にはめくるめく夢の世界が待っているのだ。どうやら自分は他の男たちよりも性欲が強い。だから、妻となる女の膣中に一回くらいの放出で自分は満足できるのだろうか。もう一回させてくれと言ったら妻となる女は自分をどう思うのだろうか。そんなつまらない悩みを抱きながら草加は高校生活を過ごしていた。
 ところが草加はまったくもてなかった。草加はイケメンスポーツマンではなかったし、どうにか教師にはなれたが、勉強だって誰かが羨むような成績ではなかった。
 せっかくできた彼女とはなぜか長続きしなかったり、トンビに油揚げをさらわれるように、突如として現れた他の男に可愛い彼女を奪われたこともあった。
 だから草加は目の前の現実をうまく受け入れることができない。
 真利亜は理想以上の女だ。小顔に金髪ショートヘア。目だって鼻だって、そして口だって草加の願望がそのままの形になっている。
 神は草加にさらに褒美を与えた。むっちりとした真利亜の体、たわわな真利亜の乳房。草加の肉棒を食い千切るくらいにきつい真利亜のま×こ穴。
 そんな真利亜が自分の妻になってくれ、今さっき寝バックで真利亜の膣中に、草加は精液の一回目の放出を終えた。それでも草加の肉棒は萎えることはなかった。硬いまま次の放出の機会をうかがっている。
 草加は真利亜にもう一度と強請った。真利亜は「ふふふ」と笑って答えた。
 あのときの心配事がばかばかしく思えた。性欲が強いという悩みがどれほどばからしいかがわかった。
 草加はこんな自分と結婚してくれた真利亜に感謝した。家庭を築くことができたし、良太も授かった。
 山小屋のことはやはり夢なのだ。この現実こそ正解なのだ。だから自分はこの現実を守る。守り抜いて真利亜と良太を幸せにする。
「真利亜」
「何?」

 
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